コラム

COLUMN

前田悠也

第23回:オーストラリア滞在記(前編)

私が所属する球団はオフ期間中、若手選手をオーストラリアに3名、プエルトリコに2名、台湾に10名派遣することになりました。実戦経験の確保や、不慣れな環境で生活することで適応力を養うことが目的と言われていました。しかし、出発直前のミーティングでは、そのほかに「日本でプレーする外国人選手の気持ちを理解すること」も派遣目的のひとつとして挙げられました。技術的、精神的な成長を促すための武者修行です。現地で彼らのサポートを行うために、通訳、トレーナー、スコアラーなどのスタッフも同時に派遣されることになりました。

先日のコラムに記したように、英語通訳の私は現在、オーストラリアン・ベースボール・リーグに参加している日本人選手に随行して、豪州南部の都市、アデレードに滞在しています。11月上旬に現地に到着したときはまだ肌寒く、昼夜の寒暖差も大きかったのですが、12月中旬になって気温も上がり、いよいよ南半球では本格的な夏を迎えています。現地入り当初、日本では見慣れない紫色のきれいな花が町のいたるところで咲いていました。調べてみるとこれは「ジャカランダ」という花で、毎年初夏に咲くそうです。私たち日本人が桜の開花に春の訪れを感じるように、現地の人々もこのジャカランダが木々を覆う姿に夏の訪れを感じるのかもしれません。また豪州は日差しが日本と比べて非常に強いため、もともと色白の私が日焼けするまでにそう時間はかかりませんでした。

当地では初夏にあたる11月上旬に、球団から派遣された選手3名と、私を含むスタッフ3名はアデレードに到着しました。日本との時差は1時間半で、こちらのほうが進んでいます。米国などに渡航するときとは違い、時差の影響をほとんど受けずに済んだのは幸運だったかもしれません。アデレード空港に到着すると、球団のゼネラル・マネージャー(GM)と、広報の女性が私たちを出迎えてくれました。現地ではレンタカーを2台手配してもらい、ホテルと球場の往復や、スーパーで水や食料を買う際の足として用います。随行するスタッフはそれぞれ国際運転免許証をあらかじめ取得して、現地でも運転できるようにしておきました。オーストラリアは日本と同じく右ハンドルで道路の左側を通行するため、初めて豪州で自動車の運転をする私もすぐに適応することがでました。豪州到着後に行った最初の業務は、選手を買い物に連れていくことや、球団を通じてSIMカードを手配してもらい、選手が日本の家族や友人と密に連絡を取れるようにすることなどで、生活の基盤を整えるための手伝いという点では、日本で外国人選手と接するときとほとんど変わりません。 次回のコラムでは、練習や試合中の様子、現地でのエピソードなどについて書きたいと思います。

前田悠也

前田悠也

東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳

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