COLUMN
第22回:ウィンターリーグ派遣
時が流れるのは早いもので、クライマックスシリーズ終了から1か月以上が経ちました。
読者のみなさんの中には、「球団通訳者はシーズンオフの間はなにをしているのだろう」と疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。たしかに私たち球団通訳者の仕事は、外国人選手がシーズンを終えて帰国するのを見届けて一段落します。多くの場合、支配下登録の外国人選手はシーズン終了直後に、育成選手の場合は11月中旬まで行われる育成練習が終了したのちに帰国の途に就きます。年が明けて外国人選手が戻ってくるまでは、現場での業務はほとんどありません。
しかし、球団によってはオフ期間中、将来を嘱望される若手日本人選手を、温暖な気候の国や地域で開催されるウィンターリーグに派遣することがあります。選手たちに実戦経験を積んでもらうのと同時に、言葉や文化が違う異国での生活が精神鍛錬になるとの理由で、私の球団からも若手選手数名をプエルトリコ、オーストラリア、台湾に派遣することになりました。
英語通訳の私は、オーストラリアに派遣される若手選手3名に随行して、1か月半にわたり南オーストラリア州の州都、アデレードに滞在することになりました。南半球に位置し、日本など北半球の国々とは季節が逆のオーストラリアでは、11月中旬から1月下旬にかけて、沿岸部各地でプロ野球の試合が開催されます。私たちが派遣されたチームは過去2年にわたり優勝を果たした強豪チームで、地元ファンの間でも3連覇が期待されています。
オーストラリアン・ベースボールリーグ(Australian Baseball League, ABL)には6球団が加盟していて、計40試合のレギュラーシーズンが戦われます。日本のプロ野球のように毎日試合が行われるわけではなく、金曜日に1試合、土曜日にダブルヘッダーで2試合、さらに日曜日にもう1試合と、週末の3日間で4試合が行われます。同一の対戦カードを本拠地で1回、敵地で1回ずつ行い、それぞれの球団とシーズンを通して8試合を行います。私たちが所属するアデレード・ジャイアンツは、MLBのフィラデルフィア・フィリーズと提携していて、地元オーストラリアの選手や他国のプロチームから派遣されてくる選手に加えて、フィリーズ傘下のマイナーリーグチームでプレーする選手が多く在籍しています。
次回のコラムでは、現地の様子について書きたいと思います。
前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳