コラム

COLUMN

前田悠也

第20回:変化球の軌道を表す英語(曲がり球編)

ピッチャーが投げるボールは、さまざまな軌道を描きます。同じ球種でも、人によって握り方、曲がり幅、落ち幅、球速、回転数が全く異なります。8月のコラムでは、ストレートが「ふけあがる」という表現について触れましたが、今回は変化球の軌道を表す英語について話します。変化球は大きく分けて、カーブ、スライダー、カットボールなどの「曲がり球」と、フォーク(スプリット)、シンカー、チェンジアップなどの「落ち球」に分類されます。今回は曲がり球の軌道を表す英語に焦点を当てます。

まず代表的な変化球にカーブがあります。数ある球種の中で最も変化量が多いとされるこのボールは、スライダーよりも遅い球速帯で、主に緩急をつけるために用いられます。しかし変化する方向は人それぞれで、古くは「ドロップ」と呼ばれたような、ほぼ垂直に落ちるカーブを投げる投手や、やや斜めの軌道を描いて沈んでいくカーブを投げる投手も存在します。この垂直に落ちる、いわゆる「縦カーブ」は英語で、“12-6 curveball”(読み方はtwelve-to-six)と表現されます。これは時計の文字盤で例えると、12時方向から6時方向にボールが落ちるように見えることに由来しています。同じカーブでも、若干斜めに変化するボールを投げる投手もいます。その場合、右投手の場合は“1-7”、左投手の場合は“11-5”など、やはり時計の文字盤に例えてその軌道が表現されます。

スライダーはカーブよりもより速い球速帯で、投手の利き腕とは反対方向に曲がる変化球です。その滑るような軌道から、スライダーと呼ばれています。カーブと同じように、スライダーも投手によって軌道が異なります。上から投げ下ろすような投球フォーム(“tall & fall”)の場合、スライダーはより縦の変化が強くなりますが、横回転の投球フォーム(“drop & drive”)でリリースポイントが低い場合は、スライダーは横の変化がより大きくなります。この真横に曲がるような変化の大きいスライダーを、英語では“frisbee slider”と表現します。これは文字通り、フリスビーのように真横に変化するように見えることからこう呼ばれています。ちなみに、通常のスライダーと比べて若干球速には劣るものの、より変化量の大きいスライダーを“sweeper”と呼びます。これは、ほうきでホームベースを掃くような軌道を描くことからこう呼ばれています。また、カーブとスライダーの中間の軌道を描くボールは“slider”と“curveball”をかけあわせて“slurve”と呼びます。

カットボールは、「カッター」や「カット・ファストボール」とも呼ばれ、直球の一種とも考えられています。スライダーよりも速い球速帯で、投手の利き腕と反対方向に小さく変化するボールです。人によっては真横に滑ったり、若干沈んだりするものの、全体的に変化量があまり多くないため、対戦する外国人のバッターは軌道よりも、球速帯とコントロールを知りたがる傾向にあります。

来月のコラムでは、「落ち球」の軌道を表す英語について書きたいと思います。

前田悠也

前田悠也

東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳

一覧へ戻る