COLUMN
第30回:オープン戦からシーズン開幕までのできごと

宮崎、沖縄での春季キャンプの全日程を消化して、オープン戦ではさまざまな都市を訪れます。その多くは交流戦を除いて対戦する機会のないパシフィック・リーグの本拠地です。福岡や札幌など、普段は訪れることのない街で試合を行います。それぞれの遠征先でご当地グルメに舌鼓を打つのは選手やスタッフにとって楽しみの一つです。
今回のオープン戦期間中は、日本プロ野球の球団に加えて、メジャーリーグの球団と対戦する機会が2回ありました。MLBワールドツアーの一環として、シカゴ・カブスとロサンゼルス・ドジャースの開幕戦が東京で行われるのに先立って、プレシーズンマッチとして私が所属する球団も上記の2チームと対戦し、私はここでおもしろい経験をしました。
野球では試合開始の直前に、両チームの監督がホームベース付近でメンバー表を交換し、また同時に集まった審判団とグランドルールなどの確認を行います。普段この場に通訳が同席することはありませんが、今回は米国人監督が率いるチームとの対戦だったことに加え、審判団も日米の混成部隊だったため、監督の指示で私もメンバー表交換に立ち会うことになりました。
監督同士が握手を交わし、審判団とルールの確認を行います。私も相手の監督と握手をして自己紹介をしました。ここで日本側が守備に就く際はNPB公式球、メジャー側が守備に就く際はMLB公式球が使用されることや、メジャー球団には2020年から導入された「ワンポイント禁止ルール」(投手は最低でも打者3人と対戦、もしくはイニングが終了するまで投球することを義務付けたルール)が適応されるが、日本側にはその義務はないことなどの確認が行われ、私はそれらを通訳しました。ちなみに先述の「ワンポイント禁止ルール」は英語で“three-batter minimum rule”といいます。 また今年からチームに新しく加入した外国人選手は、開幕戦から2本の2塁打と2点本塁打を放つ獅子奮迅の活躍を見せ、開幕シリーズの初戦でいきなりヒーローに選ばれました。開幕戦で彼の通訳として共にお立ち台に立てたことは、今後も忘れられない経験となるでしょう。
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前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳