コラム

COLUMN

加藤直樹

プロ野球キャンプ

みなさんこんにちは、読売巨人軍スペイン語通訳の加藤直樹です。本コラムを書いている現在はチームの一軍がキャンプを実施する沖縄那覇に滞在しています。プロ野球各チームは2月に入ると宮崎県と沖縄県の各地に宿舎と練習場を確保し、オフシーズンは個別にトレーニングをしていた選手が一同に会しおよそ一ヶ月の間、3月後半から始まるシーズンに向けて練習に励みます。読売巨人軍については2月前半は宮崎県、後半は沖縄県にてキャンプが開催されますが、この時期は選手たちが練習に励む一方で、外国人選手が監督やコーチ、チームメイトと良い関係を築いてチーム馴染むことができるようにサポートすることも通訳者の重要な役割です。

◼️業務は急に繁忙期へ
通訳者にとってもは休養に当てる時間が多く取れたオフシーズンは終わり、キャンプが始まると一気に業務が増えて忙しくなります。その意味では通訳者にとってもシーズンへ向けた重要な準備、立ち上げ期間とも言えるかもしれません。キャンプ中の基本的な動きですが、通訳者は選手のスケジュールに合わせて一緒に行動します。キャンプの時期は報道陣も多く、練習の間の移動時に質問をされることや、球団のファンサービス担当部署からファン対応を求められることがありますので、選手のそばにいながらその都度通訳をします。また、野球用具メーカー各社もたくさん来場し、シーズンを通して使用する野球用具の試着や試用も多いこの時期は、選手の用具選びのサポートや発注作業の業務も忙しくなります。その他、選手のキャッチボール相手やボール捕球、トレーニングのサポートをすることもありますので、キャンプ期間は通訳者も体力勝負です。

(例)

07:30 朝食
08:00 球場移動
08:30 全体練習前のコンディショニング
09:45 全体練習
12:00 昼食、取材対応
12:30 個別練習
13:30 ウェイトトレーニング
15:00 取材対応、ホテル帰館
15:30 治療
16:30 部屋に戻りPC作業(メールチェック、選手用具発注、レポート作成など)
19:00 夕食

◼️外国人選手とチームの橋渡し
通訳者は外国人選手に付いて通訳をしますが、通訳しているとき以外でも積極的に監督やコーチ、チームスタッフとコミュニケーションをうまく取り、選手の橋渡しになることがとても大切です。言葉が違うとどうしてもコミュニケーションに制限が生まれてしまい、その結果誤解や間違った印象を与えてしまうことも決して珍しいことではありません。例えば、実際は恥ずかしがり屋でなかなか自分から溶け込むのが苦手な性格な選手が、日本人の目にはいつも険しい表情で近寄りがたい印象を与えていたとしたら、「実は話しかけられると嬉しいんですよ」と練習の合間などの立ち話で選手の性格について通訳者から見た選手の印象を共有したり、あるいは、練習態度が怠けているように見える選手が実は日本に来る前は長い練習時間を経験したことがなく、体力が持ち堪えられていないのが実際のところということを通訳者がチームに共有することができれば、怠け者というレッテルを貼られずに済むだけでなく、実は頑張り屋な性格の持ち主ということがわかってもらえるかもしれません。印象操作とまではいかないですが、偏見や誤解ではなく正しく外国人選手を理解してもらえるように同じ言語を話す通訳者だからこそわかることをチーム関係者に話をしていくことも通訳者ができる重要な役割です。

キャンプは体の準備ももちろんですが、一年間戦うためのメンタルや人間関係の土台を築くためにもとても重要な期間です。特に新しい選手が加入した場合、選手がチームに溶け込めるかどうかは選手のパフォーマンスは言うまでもなく、チーム全体の士気や結果にも繋がります。通訳をしている時間以外にもチーム付き通訳者としてどのように選手、チームに貢献できるか、私自身も考えながら業務に取り組んでいきたいと思います。

今日の話も皆さんの参考になれば幸いです。 それではまたお会いしましょう。

加藤直樹

加藤直樹

福島県出身。スポーツメーカー勤務後、独立行政法人国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊員として活動。その後、ジャイアンツアカデミーコーチを経て現在、巨人軍スペイン語通訳。

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