COLUMN
第14回:野球用語に散見される和製英語
野球は米国発祥のスポーツです。したがって、「ストライク」、「ボール」、「セーフ」、「アウト」など、日本においても英語で表現される野球用語がたくさんあります。
しかしながら、明治期に日本に紹介され、本場米国とは若干違った形で発展を遂げてきた日本野球には、ネイティブスピーカーには理解できない和製英語が多数存在します。
今回はそれらの例をいくつか挙げて説明したいと思います。
まず、試合前に行われる練習の一つに「シートノック」と呼ばれるものがあります。大まかに説明すると、これは野手がそれぞれのポジションに就き、「ノッカー」と呼ばれるコーチが放つ打球を捕球して、各塁に送球する練習を指します。しかし、「シートノック」という言葉は米国では使われません。
英語ではこの練習を、“infield/outfield”と表現します。略称は“in & out”、“IO”などで、直訳すると「内外野」という意味になります。
なぜ日本で「シートノック」という名称が定着したかは諸説がありますが、他に「シート」の名を冠する練習に、「シート打撃(シートバッティング)」があります。
これは野手がそれぞれの守備位置に就いた状態で行われる打撃練習のことで、英語では”live BP”と称されます。“BP”とは“batting practice”の略で、こちらも直訳すると「生きた打撃練習」となります。
試合前に打撃投手の投じるボールを打ち返すバッティング練習と比べ、アウトカウントや走者の有無などを考慮して、状況に応じたバッティングが求められることから、より実戦に近い練習として、特に春季キャンプなどで多く行われます。
また先ほど説明した「シートノック」の「ノック」の部分も、厳密には和製英語と言えます。
米国をはじめ、野球の盛んな英語圏の国々では、“knock”は安打(ヒット)を意味します。しかしながら日本では、ノッカー(これも和製英語)が打つゴロやフライを捕球する練習を意味します。
このように野球では、日本語と英語で表現が異なる用語や、同じ言葉でも違う意味になる用語がたくさん存在していますので、今後のコラムでも定期的に取り上げていきたいと思います。
前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳