COLUMN
第11回:単位の換算
野球は米国発祥のスポーツです。米国では距離、速度、面積、体積、温度などの単位は全てヤード・ポンド法に基づいて表現されます。
例えば、日本では投手のプレート板とホームベースの距離は18.44メートル、塁間の距離は27.431メートルとして知られていますが、ヤード・ポンド法を用いる米国ではプレート板と本塁の距離は60.5フィート、塁間の距離は90フィートと決まっています。選手の身長はフィート・インチで、体重はポンドで表されます。身長6フィート2インチ、体重200ポンドの選手がいたとします。メートル法に換算すると、この選手は身長約190cm、体重約90kgになります。投手の球速も米国ではマイル毎時で計測されます。日本の球場では時速約100マイルの速球は時速160km、時速約80マイルの変化球は130kmと表示されるため、初めて来日する米国人選手は、まずこのシステムの違いに戸惑います。
また、母国では華氏で表現される温度も、日本では摂氏を用いるため、
「明日は暑くなるよ。」
「何度くらい?」
「予報では35度!」
と言っても選手はピンときません。摂氏35度は華氏95度ですので、相手に合わせて温度も後者で伝えます。
来日して2年目以降の選手は日本での生活にも慣れるため、メートル法でも距離や速度を認識できるようになりますが、日本に来て間もない選手は瞬時に換算しようとすると負担も大きいため、こちらが置き換えて通訳します。しかしながら、私は算数が決して得意ではないため、その場で電卓を使わず換算するのは容易ではありません。そのため予め、「時速150キロメートルはだいたい時速93マイル」、「180cmはだいたい5フィート11インチ」、「摂氏30度は華氏86度」など、日ごろから多く出くわす数字をあらかじめ暗記しておいて、その上でそれぞれの単位の換算方法(1マイル≒1.6kmなど)に基づいて足し引きを行い正確な数字を割り出せるようにしています。
また時間についても、日本では24時制(午後1時=13時など)を用いますが、米国や中南米の国々では軍隊での通信などを除いてAMとPMで区別することがほとんどですので、24時制で表記されたスケジュールなどが送られてきた場合は必ず12時制に直して選手に伝えます。
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前田悠也
東京都出身。中学から米国に留学。現在、巨人軍英語通訳